シャー シャー シャー シャー
トンッ
カンッ
ズンッ
タンッ
トンッ
タンッ
カンッ
ズンッ
二月最終日の夜中
午前三時半
僕は庭と隣接している書斎で寝ていた
my eyes were closed
何かが きこえた
シャー シャー シャー シャー
僕の意識は夢と現実の間まで戻ってきた
but my eyes were still closed
体も動かない
耳だけに命がふきこまれていたようだった
静かな書斎
耳をすます 僕
とてもきれいな
音が きこえる
きこえる
not just one sound
暗闇で包まれた書斎の壁をこえたむこうに
色んな音色が きこえる
トンッ
カンッ
ズンッ
タンッ
僕は
錯覚におちいった
まわりには誰もいない
空席のだだっ広いホールの中心で
僕は一人で演奏会をきいていた
とっても気持ちがよかった
僕の意識は完璧に現実にいた
神経が研ぎ澄まされる
雨の音がかすかに きこえ はじめる
外で雨が降っている
そうか
僕はまた 耳をすます
トンッ
カンッ
ズンッ
タンッ
笑い声がきこえる
庭にある
岩や
バケツや
縁側や
水槽や
室外機の上に
飛び込んで落下し
さまざまな音色を奏で 遊ぶはしゃぐ 一つ一つのシズクたち
僕の目はあいていた
時計を見た
午前三時半
演奏会はまだ続いていた
お客はやっぱり僕だけだった
頬が
シズク
で
濡れていくのを感じた
午前三時半